読書感想文『サーバントであれ』

2020/03/26

『サーバントであれ』(ロバート・K・グリーンリーフ著)を読んで

グリーンリーフがサーバントリーダーシップについて書いたのは、1970年、66のときである。1970年は、日本万国博覧会があり、ビートルズが解散した年である。1971年には、ニクソン・ショックがあった。1971815日にニクソン大統領が、国内の失業とインフレに対処するための政策で、それまでの固定比率(1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を一時停止したことによる、世界経済の枠組みの大幅な変化である。

つまり、変化のあとに必要なリーダーシップについて、グリーンリーフが探求し続けていたのが、「サーバント・リーダー」である。 

「長く組織に関心を寄せてきた人間として、私はこう思っている。深刻なレベルでビジョンが欠如しているという悪しき状態が、教会や学校、企業、慈善団体など私がよく知るあらゆる組織に、どうやら蔓延している、と。さらには、そうした組織では、必要とされるビジョンが経営のリーダーから発信されていないようである。経営のリーダーは、重要で必要な人ではあるが、先々のことを見すえず歴史観に欠ける―いずれも生産的なビジョンを不可能にする欠点だ―傾向があるのだ。」(36頁)

経営のリーダーは、歴史観をもち、先々のことを見すえる能力がなければならない。まさに、初代ドイツ帝国宰相ビスマルクの名言「愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験(歴史)から学ぶのを好む。」である。『貞観政要・巻第六』に、唐(618-907)の第二代皇帝、太宗・李世民(598-649)が、自身が実践している三つの行いを挙げている。その一つに、「前代の失敗の事を手本として戒めとする。

歴史観を鍛えるためには、どうしたらよいのか?私は、王陽明(1472-1529)が唱えた、「知行合一」だと考える。勉強して知識をつけるのはあたりまえで、その知識をもとに実践していかなければならない。実践するからこそ、失敗するのだ。失敗するからこそ、さらに、歴史を学ぼうとするのだと考える。

『「知っている」ことは強みだが、抑制的な「偏狭なものの見方」から解放され、そうした知識を使おうとしなければ、宝の持ち腐れになってしまうのだ。』(46頁)

先々のことを見すえる能力も、これも実践・鍛錬でしか養えない。自分自身の人生計画や、会社の経営計画を立案して、検証して、計画との差を認識するからこそ、修正行動がとれる。その繰り返しで計画立案能力を鍛錬することにより、先々の見すえる能力が養えるのだと考える。

「歴史や神話に経営トップが無関心であることが、どれほどの損害をもたらすかを思い知った。どのような組織であれ、組織における過去の一連の出来事と、そうした過去の一連の出来事を彩る神話とを明確に把握せずして、現在における組織へのかかわりを、本当に理解することはできない。歴史と神話はどうやら、現在を理解しやすくするために、互いを必要とするようなのである。」(40頁) 

 私がサーバント・リーダーを知ったのは、フレデリック・ラルー著『ティール組織』(2018年)である。経営者が業務を管理しなくても、組織のメンバーが組織の目的実現に向けて、自主的に働く新しい組織形態(ティール組織)が出現してきている。ティール組織は、①進化する目的、②自主経営が可能となる仕組み、③個人としての全体性の発揮(ホールネス)の特徴をもつ。

 ティール組織に移行するまえの組織に、多元型(グリーン)組織という組織形態がある。多元型組織は、古典的なピラミッド組織の中で、文化と権限委譲を重視して、従業員のモチベーションを驚くほど高める。多元型組織のリーダーたちは、問題を公平に解決できるだけでなく、部下に耳を傾け、権限を委譲し、動機づけ、育てるサーバント・リーダーにならなければならない。(ただし、サーバント・リーダーを育てるには、かなりの時間と労力がかかる。)

 中小企業を支援しているなかで、中小企業はまずは多元型組織を目指すべきだと考えた。そのためには、中小企業経営者は、サーバント・リーダーにならなければならない、と考え、サーバント・リーダーを学んだ。 

「どのように組織を変えれば、組織によって心を動かせるあらゆる人に対し、その組織がもっと奉仕できるようになるかを、私たちは知っている。つまり必要なのは、人々が志を高く持ち、前向きに行動するみずからの意志に気づき、解放できるようになるビジョンなのだ。そうしたビジョンは、道義心によって促進されたり、意識的な探求から自然に生じたりすることもある。」(49頁)

まず、従業員一人一人が、志を高くもつためには、どうしたらよいのか?

『真のリーダーは、「俺を見てくれ!」ではなく、「みんなで素晴らしいことをしよう!と叫ぶ』(原則中心57頁)つまり、会社全体として社会に貢献できる理念を掲げて、それに賛同する従業員は、志を高く持ち続けられるのだと考える。

次に、前向きに行動するみずからの意志に気づくためには、「給与よりねぎらいの言葉である。賃金の引き上げよりも、上司からのねぎらいの言葉、より良い椅子、苦労を理解してくれる社長、こういうものが人の心に大きく響く。」(原則中心87頁)

さらに、解放できるようになるビジョンとは、会社にとって「共有ビジョン」である。「―地位を問わず個人が、この夢は自分のものだと主張することー(ピーター・センゲ)。このような共通の夢が支配的になる条件は、ビジョンを展開するにあたり多くの人が参加することかもしれない。」「素晴らしいビジョンを持ち、はっきり言葉にして夢を語れる人は、事あるごとに「みんなに意見を聞いてみる。」「うまく導かれている組織では、「めざすべき未来は何か」という問いに対し、総意を重視して事を進めることが習慣になるのである。」(145頁)

リーダーの責任は、「拠り所となる夢を形にするときの自分の役割を意味深いものとする機会に、絶えず敏感であり続ける。」ことである。(146頁) 

なぜ、サーバント・リーダーが社会において必要なのか?

『もしよりよい社会、すなわち、もっと公正で思いやりがあり、人々に成長の機会を与える社会を築くことができるなら、最も効果的、経済的で、かつ社会秩序を後押しする方法は、献身的な個人つまり「サーバント」主導で、人々がみずから組織のなかで次のサーバントを生み出す存在になることにより、できるだけ多くの組織がサーバントとしてもっとしっかり行動できるようになることである』(61頁)

サーバント・リーダーは、修練・鍛錬していかなければならない。そのために、「リーダーとして、まず良い人間でありなさい。」(原則中心26頁)。「最大のサービスとは、君の人格を上げることだ」(鍵山秀三郎氏)。「人の見えないところでの努力は、人の見えるところでの成功に役立つ。」(原則中心28頁) 

サーバント・リーダーには、①傾聴、②共感、③癒し、④気づき、⑤説得、⑥概念化、⑦先見力、⑧執事役、⑨人々の成長への関与、⑩コミュニティづくりの特徴がある。そして、サーバントリーダーシップにより、企業の第一目的である、従業員や地域社会に建設的な影響をもたらすことができるのである。(はじめに)

我われは、サーバントリーダーシップについて徹底的に話し合い実践していき助け合い会社に取り入れ浸透させていき、社会に必要とされる会社になっていかければならない。我われは、お客様が話されていないことにも、ありのままに耳を傾けていこう。

及川

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